ハードコーティングとソフトコーティング
「カーコーティング」という言葉は、ガラスコーティングやセラミックコーティングなどの硬化系コーティングを一般的には意味するのだと感じています。
固まる液剤で、塗装面の上に無機質の固い保護膜を張るものです。

私はこれを「ハードコーティング」と表現しています。
ガラスコーティングとセラミックコーティングにも色々な種類があり、全てセラミックコーティングと呼んでもいいのではないかとも思っていますが、それぞれの事情もあるとは思いますのでハードコーティングという呼び方で統一しています。
これに対して、カルナバワックス、ポリマーシーラント、クリーナーワックスなどは、固まらない油脂系の液体や固形物で、塗装面の上に有機質の柔らかい保護膜を張るものです。

私はこれを「ソフトコーティング」と表現しています。
塗装面との接し方の違い
ハードコーティングとソフトコーティングの違いは、塗装面に結合しているか否かだと認識しています。
結合( Bonding )、架橋( Cross Linking )といった難しい理屈もありますが、私の中での解釈(イメージ)は次の通りです。
ハードコーティングは、塗装面と結合(一体化)して剥がれにくい保護膜です。(強い保護膜)
ソフトコーティングは、塗装面にくっ付いたり、入り込んだり、乗っかったりする保護膜です。(弱い保護膜)
この接し方の違いが、耐久性の違いとなる訳です。
ハードコーティングは、塗装面のクリア層とコーティング剤成分が化学反応を起こし、分子レベルで結合します。
ソフトコーティングは、それぞれ異なります。
- ポリマーシーラントは、架橋して塗装面にくっ付きます。
架橋とは、よく例えられるものがスパゲティやうどんのような棒状のものであって、時間経過とともに段々と手を繋ぐようにくっ付いて、格子状の網目を形成していくイメージです。
大気中の水分がトリガーとなって架橋が始まります。
その網目が塗装面に定着する(くっ付く)のです。
ただ、ハードコーティングと比べその網目は粗く、隙間が広いのです。
ハードコーティングはその網目がぎゅうっと隙間なく詰まっているイメージです。 - カルナバワックスは、塗装面の微細な凹凸に入り込み居座り(しがみつき)乗っかります。
ただ、ハードコーティングやポリマーシーラントとは異なり、塗装面と化学的結合はしません。
また、塗装面の傷に対して、その「谷」の部分を埋めて平滑にする能力があります。
つまり、塗装面という肌に寄り添うような定着です。 - クリーナーワックスなどのオイルベースのものは、塗装面の微細な孔に浸透します。
塗装面と化学的結合はしません。
汚れを浮かしながら成分を置き換える性質を持つため、塗装面を整え潤いを与えるようなイメージかと思っています。

ただ、これは基本的な話です。
各コーティング剤は色々な調整や調合をされています。
例えば、カルナバワックスでも 1 年近く効果が持続するものも存在します。


艶感の違い
これまでは、感覚的な話で終わらせていました。
しかし、調べてみるとちゃんと理由があったのです。
それは、光学的な違いです。
艶の質感の差は、主に光の反射の仕方、鏡面的・拡散的反射と屈折率の違いです。
「ハードコーティングの艶感」
・光の屈折率が高く、塗装面(クリア層)の屈折率との差が大きく、物質の境界での反射がシャープになる。
・表面硬度が高く、極めて平面な鏡面となり、光がくっきりと跳ね返る。(鏡面的反射)
この「高屈折率×鏡面反射」の組み合わせが、光の反射がカリッとした硬質感として知覚される理由です。
「ソフトコーティングの艶感」
・光の屈折率が塗装面(クリア層)と近く、光が緩やかに層をまたいでいき、物質の境界での反射が穏やかになる。
・塗装表面には微細な凹凸が残っており、これが光を僅かに散乱させじんわりと広がる。(拡散的反射)
この「低屈折率」×拡散反射」の組み合わせが、人間の目には「温かみ」と「深み」として知覚される理由です。
「深みについて」
ソフトコーティングは、層が半透明で柔らかく、光がある程度層の内部まで入って塗装面で反射して戻ってくるので、奥行き感・深みが知覚される理由です。
ハードコーティングは、表面での反射がシャープ過ぎるため、奥行きより鋭さが際立つことになります。
「濡れ感について」
ウェットルックと呼ばれる艶感。
水に濡れた面がなぜ「濡れて見える」かというと、水の層が表面の微細な凹凸を埋めて平滑化し、さらに水自体の屈折率( 1.33 )が空気( 1.0 )より高いことで光の反射の仕方が変わるからです。
つまり「濡れ感」の正体は、
・表面の凹凸が埋まって平滑になること
・屈折率が空気より高い透明な層が乗ること
・その結果、暗部がより暗く、明部がよりシャープになること
の 3 点です。
となると、ハードコーティングもソフトコーティングも条件は満たしています。
しかし、なぜソフトコーティングでの特徴になるのでしょうか?
それは、前述の「深み」と同様で、ハードコーティングは「濡れ感」というコントラストがあっても、反射がシャープ過ぎるため鋭さが際立ってしまうのです。
コーティングによる心理的な側面
最後にコーティングに伴う心情というか、心理的な側面について。
「コーティングに求めるもの」
何故オーナーはコーティングを施そうと思うのでしょうか?
一番の理由は、意識しているかしていないかを問わず、塗装面を保護する「安心感」を求めているからに他ならないと感じています。
コーティングで塗装面を「守る」。
「守る」のであれば、強固に長く守って欲しい。
プラスしてメンテナンスも楽な方が良いとの欲求です。
だから、ガラスコーティングやセラミックコーティングなどのハードコーティングが選ばれる訳であり、コーティングのデファクトスタンダードになっているのだと思います。
「耐久性とコストの関係性」
私の個人的な思いかもしれませんが、コーティングの耐久性と施工コストは比例関係にあると思っています。
高い耐久性を持つセラミック・ガラスコーティングは、その施工料金も高いです。
コーティング専門のショップさんにに依頼し、必要であれば機械式研磨も行うかと思います。
私の感覚では、かなり高額である認識です。
それに対して、ソフトコーティングは専門ショップさんへの依頼は不要です。
DIY で施工可能なものです。
DIY でなければ、当店のような洗車屋さんを活用してくだされば。
それに、カルナバワックス・ポリマーシーラント・クリーナーワックスなど資材の価格もだいぶ安価です。
ただし、天然カルナバワックスは、ブティックワックス呼ばれるものはかなり高額な印象です。
「コーティング後の心境」
コーティング後の心境ですが、まずは大きな「安心感」に包まれます。
しかし、時間の経過とともに、コストをかけたコーティングが剥がれてしまうことに「不安感」を感じ始めます。つまり、「安心感」が「不安感」に変貌してしまうような気がしています。
これはハードコーティングでも、ソフトコーティングでも同じだと思います。
ただ、大きなコストをかけるハードコーティングの方が不安は大きいかも知れません。
ただですね、私の個人的な考え方で言えば、ソフトコーティングは日に日に痩せていきますが、ハードコーティングは基本的に削らなければ落ちないような気がしているのです。
また、これも個人的な思いなのですが、コーティング専門のショップさんでメンテナンス用品を販売・提供しているショップさんを選ぶべきだと思っています。
スケール除去剤・ピッチタールクリーナー・メンテナンス用のコーティング剤です。
そのようなコーティング専門のショップさんでは、研磨成分配合の液剤は取り扱わないですし、油脂系もピッチタールクリーナーしか取り扱いません。
そのようなメンテナンス用品でメンテナンスを心がければ、剥がれ落ちてしまうことはまずないだろうと考えています。
ちなみに、ソフトコーティングは、ペイントクレンザーやペイントクリーナーなどの油分除去剤で落ちてしまいます。
これは、一見デメリットとと思えますが、当初から理解している事実なので、その「諦めの良さ」はメリットだと思っています。
例えば、失敗しても簡単にやり直しができますし、気に入らなければ簡単に落とせるのです。
また、それらを使わなければと感じた時が、コーティング保護膜を入れ替える時期なのです。
入れ替えるとしても、その施工はハードコーティングと比べて簡単なものです。
ハードコーティングでは、研磨で落とすしかないと思います。
また、スケールに対しては、ソフトコーティングの場合は、界面活性剤が配合されていない、あるいはごく僅かな配合のスケール除去剤であれば気にする影響はないです。
ハードコーティングはスケールが付きやすい傾向にありますが、そのコーティングを施行したコーティング専門のショップさん販売・提供しているスケール除去剤であればば気にする影響はないはずです。
つまり、信用できるショップさんということです。
最後に
結局はどちらが良いとか悪とかではなく、単純に好みの問題だと思っています。
私は単純に、施工性も良く、簡単にやり直しや着せ替えができて、「温かみのある艶」を醸し出すソフトコーティングが好きなだけということです。

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