理想と現実

まずはバイクに乗り始めて、綺麗なバイクでライディングすることが好きでした。
そしてクルマにも乗り始めて、やはり綺麗なクルマでドライビングすることが好きでした。

初めはシュアラスターのワックスでした。
それと汚れ落とし用に半煉のコンパウンドと呉のポリメイトCRC556
バイクとクルマで使うケミカル剤はほぼ一緒でした。
クルマではシャンプー洗車をしていましたが、その頃横浜にはダイクマというディスカウントショップがあって、そこで売っている一番安いカーシャンプーを使っていました。

1970年代の話です。

屋内ガレージとは縁遠い生活でした。
バイクは路上で、クルマは団地住まいの時は共用の洗車スペースがありそこで、団地を離れてからはコイン洗車場やガソリンスタンドの洗車機となりました。
洗車機に入れたあと、路上でワックスを掛けていました。

そう、路上の洗車です。

カワサキのバイクだったのですが、エンジンが黒色だったのです。
その黒色のエンジンを綺麗にするのに使っていたのが CRC556 でした!?
CRC556 を吹きつけて、ウエスで綺麗に拭うのです。
それが一番綺麗になったのです。
今から思えば、油を油で落とす原理で納得できるのですが、CRC556 は浸透性があるのでよく不具合を起こさなかったと思います。

で、昔はウエスでした。
着古した T シャツや布切れでした。
ただ、肌触りが良い綿製のものを好んで使っていた記憶があります。
この癖は今でもあって、肌着のシャツが古くなっても捨てずに何故かキープしているのですよね。
今だから言いますが、パンツも使っていました!?
T シャツなどはワックスの拭き上げ用で、パンツはチェーンやキャストホイールなどの目一杯汚れる所に人目を気にしながらこっそりと使っていました。(笑)

ウエスと言う言葉を聞かなくなって久しく、マイクロファイバータオルやクロスというものに置き換わりました。
当店(自分)自身も、マイクロファイバータオルを使うようになりました。
しかし、リンスレス洗車では最近まで綿タオルを使っていましたし、綿タオルよりマイクロファイバータオルの方が良いのかは正直今でも絶対にそうなのかは判断がついていません。
多分、その方が良いだろうと感じているだけです。

そして、今思い返してもそのやり方で美観の実現や維持に何も問題はなかったと思うのです。

ただ、洗車傷(スワールマーク)は付いていました
洗車傷が付いていたから、ワックスを塗って埋めて目立たなくしていたのです。
洗車傷だけではありません。

バイクで言えば、燃料タンクの後方部分。
シートとの接点ですが、そこはお腹周りの衣服やベルトなどと干渉して塗装が傷付き薄くなります。
また、シートは脱着できるので隙間が生じます。
そこも、シートの開閉や荷重により、タンクの塗装が傷付き剥げたりもします。
あと、ステップ付近のフレーム部分。
ここは、足の踵などを意図的に当ててフォームを保持していました。
よって、このフレーム部分も傷付きます。
そして、ツリーングに出る際にはタンクバッグでした。
燃料タンクの上にバッグを載せるのです。

クルマで言えばドアハンドル部分。
ドアの開閉ごとに触る部分なので傷付きます。
ステップ部分も足(靴)がぶつかり傷付きます。
また、路上を走れば走るほど、跳ねられた石でフロント部分やフロントガラスが傷付くのです。

つまり、誤解を恐れず言えば、道具は大切に使っていても使えば必ず傷付くものだと思っています。
昨今の風潮として、些か洗車傷に対して過敏になり過ぎているように感じています。
傷付くことを恐れて、その道具に遠慮をしたり、使わないことは果たして道具に接する姿勢として、、、と感じてしまうのです。

ただし、例外もあると認識しています。

道具としての役目を全うしたバイクやクルマたちです。
これはもうお世話になったことに感謝しつつ、労り愛でるべきだと思っています。

数ヶ月前から、ビューティフルカーズさんや GANBASS さんの洗車方法を調べ咀嚼してきたつもりです。
システム化された内容、ならびにシステム化を可能としたケミカル剤開発力、そしてその洗車方法など、敬服するしかありませんでした。
ただ、先日もブログに書いたのですが、第一歩の洗車方法で足踏みをしてしまうのです。
洗車環境が異なるのです。。。

潤沢に水が使えず、リンス(濯ぐ)することすらままならない環境なのです。
となると、準ずることがなかなか難しいことだと理解し結論付けました。
では、どうするか?

理想と現実があると思うのです。

理想は洗車ガレージ内での施工です。
屋内で、空調と照明などの設備が整った環境です。
コーティング屋さんなどでは、ブースの密閉性や空調による室温・湿度管理と照明などまで完備した環境もあります。
しかし、現実は屋外です。
駐車場や路上です。
考えれば判ることですが、どう足掻いても同じようにはできないのです。
となれば、同じようなアプローチを目指すのではなく、有用な部分のみをピックアップして活用させてもらうことなのだと思います。

洗車傷や傷もそうです。
理想は傷を入れないことです。
傷を入れないことを実現するのが、ビューティフルカーズさんや GANBASS さんの洗車方法です。
だけどそれは、水道設備があることが最低必要条件のように感じています。
また、普通に洗車をすれば、大なり小なり洗車傷は入るはずです。
洗車傷を許せなければ、理想とする環境で理想とする洗車方法で行うしかないと思います。
また、クルマという道具を使う上での傷ですが、その傷すらも受け容れられないのであれば使う頻度を減らすしかないと思います。
ですが、それは本末転倒な話です。
道具が道具でなくなってしまい、道具が美術工芸品の類に昇華してしまう気がしています。

では、道具としての傷は受け容れられる場合、洗車傷は受け容れられますか?

結局はそういうことではないかと思っています。

そして、思い出したのです。
クルマの美観維持において、黒塗りのハイヤーに憧れて目標としていたことを。
黒塗りのハイヤーはいつもピカピカに磨き上られていました。
待機時間や休憩時間に、路上で羽はたきを使って埃を落としていたり、何かで拭き上げていた光景をよく目にしていました。
当時調べてもガラスクリーナーを使っているらしいとしか判りませんでしたが、今はそれが日本摩科工業さんのグラスターゾルオートだと知りました。
傷は入るかも知れませんが、紛れもなく綺麗なクルマが日常にあるのです。

何か性善説か性悪説みたいな話になってしまいましたが、洗車傷や傷をどう捉えるかだと思うのです。
受け容れるか、受け容れないかです。

昨今、本当に多種多様なケミカル剤が日々登場しています。
そのおかげで、洗車というもが思いっ切り複雑化していると思います。
ただ、その複雑化というものは、新商品をアナウンスする内容に翻弄されて自ら複雑化してしまっているのではないかと考え始めたのです。
当店(自分)自身も翻弄されていたと思います。

ただ、新製品の成分やフォーミュラは確かに異なるとは思います。
しかし、クルマを綺麗にする本質上で大きな違いがあるとは思えなくなってきたのです。
つまり、耐薬品性能だとか、耐久性だとかは本質ではなく付加価値的な要素だろうと。

そして、話題の新製品が発売された途端、SNS 上には購入しましたとの投稿で溢れ返ります。
この風潮がだんだんと怖くなって来てしまったのです。
容易に本質を見失わせる状況が怖いのです。
これは、趣味としての洗車などを否定するものではありません。

当店(自分)自身、あれ?、これって結構いいかも知れないと調べ、手を出してしまうのです。

サービスを提供している以上、より良いものをご提供したい気持ちがあるのです。
ですが、前述の通り当店(自分)の洗車スタイルは出張洗車であり、屋外施工のストリート系なのです。
よくある、「炎天下での作業、ボディ温度が高い状態での作業はお控えください。」という商品説明にいつもモヤモヤするのです。
その環境条件を避けられないのです。。。

例えば、カルナバ天然ワックスですが、「炎天下での作業、ボディ温度が高い状態での作業はお控えください。」との説明がなく、動画で夏にでも使えるように作ったと説明されていたのが Sam’s Detailing さんのワックスです。
つまり、Sam’s Detailing さんもストリート系であり、ストリート系を意識して物作りされているところが大好きであり、信用できるのです。
また、AKI さん系のクリーナーワックスも当然そうです。
あとは、Labocosmetica さんのケミカル剤も、そのような商品があります。

製品成分もそうかと思っています。
研磨成分、有機溶剤、界面活性剤など、色々とネガティブに言われることが多いです。
ですが、必要があって配合されているはずであり、その成分も色々な種類や属性があるはずです。
研磨成分で言えば、研磨成分であるため厳密に言えば掻き取っていると思います。

ガラスコーティングが登場し始めた頃、ワックスが悪者にされました。
有機溶剤が配合されているので塗装やコーティングを溶かしますとか、油なので酸化して劣化しますなどといった悪意を感じる流布。

現実としてその成分などでダメージを被ったから仰っているのですか?
それとも、その成分機能や属性から判断して、過大な憶測で仰っているのですか?

全般的に言えるのですが、その成分でダメージを受けた事実があるか否かが真実だと思います。

現実は言葉より強いはずです。

情けないのですが、このようなことを周期的に考え整理する状況が続いていました。
自己投資といえば聞こえは良いですが、かなりの散財もしてしまいました。
自分でも辟易しています。
感化されやすいなと。。。
ただ、今回で最期となります。

当店(自分)は屋外施工をする出張洗車屋です。
つまり、路上の洗車屋です。
ガレージを持つインハウスの洗車屋さんとは異なります。
施工環境が厳しいことからは逃げられない洗車屋なのです。
でも、決して洗車傷が入っても良いと思いながら洗車をしている訳ではありません。
しかしながら、クルマを綺麗にしようとする洗車は、丁寧さを心掛けても悲しいかな大なり小なりの洗車傷を付けてしまっているはずでありジレンマです。
どんなに優れたケミカル剤やツールを使用しても避けられない事実として認識しています。
洗車傷は受け容れて、埋めて目立たなくするポリシーなのです。
塗装への傷が付くことをストイックに避け、クルマを道具ではなく美術工芸品の類にするつもりはないのです。
道具であるクルマを、触ることも憚れるような領域に昇華させたくはありません。
当店(自分)が目指すところは、クルマは道具であり傷付くものだと受け容れながら綺麗に仕立て上げることです。
それが洗車の本質だと思っています。

洗車をして埃や塵を落として、
洗車で落ちない汚れを落として、
小さな傷を埋めて目立たなくして、
ワックスをかけて綺麗にする洗車屋です。

実は机上にある昔の写真を眺めながら、昔のことを思い出してみたのです。
結局は、バイクやクルマを綺麗にするためにやることは、今も昔もそう変わりないと気付かされました。
手段やツールが増えただけであり、劇的な変化をもたらすものはそう多くないと思っています。
施工性やその効果が自身にとってメリットとなれば導入するだけの話です。
ただし、根っこは変わらないはずです。。。

日進月歩、多種多様性、情報過多な時代ですが、世の中の流れに翻弄されない温故知新な姿勢でいかせてもらいます。

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